山口洋子が結婚を考えた大本命は中日ドラゴンズ所属の「F」
しかし、前出の女性誌には出会った経緯も詳細に書き記している。選手は中日ドラゴンズに所属するF。出会いのきっかけをつくったのは、名古屋に住む洋子の実父だったという。
山口洋子は料亭を経営する資産家の父と、その料亭で仲居として働いていた母との間に生まれた非嫡出子だったことはすでに述べた。別に家庭を持つ実父と暮らすことはなかったが、上京して東映の女優になり、銀座でクラブを経営していた娘のことを父は何くれとなく気にかけていたらしい。中日球団の社長と親しかった父は、その縁でFとも面識があった。そこで「娘が東京でクラブをやっている。東京に行ったら店に寄ってやってほしい」とFに頼んだというのだ。親心だろう。贖罪の意味もあったのかもしれない。以降、Fは東京遠征のたびに「姫」に顔を見せるようになり、2人は恋に落ちたというのだから、事実は小説より奇なりである。
それどころか、洋子はFとの結婚を真剣に考えるようになった。再び自伝からひく。
《あろうことか私は恋をしていて相手との結婚を願うあまり、念願の場所に店を持ちながらあっさり銀座を引いて一時休業してしまうからだ。いま考えても心底結婚するつもりがあったかどうか疑わしい。(中略)何かしら懸命に婚約者を演じていた気もする》(同)
しかしFとの関係も、安藤昇と同様、唐突にピリオドが打たれることとなる。(つづく)