鈴木慶一さんがプロデュースしたアルバム「マラッカ」の衝撃
平野 その時代にPANTAさんは「頭脳警察」を解散し、77年に「PANTA&HAL」を結成。79年にロックの名アルバム「マラッカ」をリリースした。日本ロックの金字塔となったそのアルバムのプロデューサーを慶一さんが担当した。
「新宿ロフトにPANTA&HALのライブを見に行って『ほぼサウンドは出来上がっている。相当に練り込まれ、完成している』という印象を持ちました。どこかフュージョンっぽいところもあったし、あとは<甘くせつない感じと洗練されたロックの轟音>もあった。そういった部分を残しながら、サンバやガムラン的なアイデアなどを取り入れて変化をつけました」
平野 PANTAが80年にリリースした「1980X」のプロデュースも慶一さんが担当。ロックの名盤と呼ぶにふさわしいアルバムを立て続けに世に送り出してくれた。PANTAが「同じレコード会社のピンク・レディーが稼いだ金をスタジオで湯水のように使ってつくった」と言っていたのが印象的だった(笑い)。
「当時は、パンクやテクノやニューウエーブなど新時代の音が芽吹き始めていた。『マラッカ』『1980X』は、70年代と80年代のはざまで起きたロックの変換点が表れているアルバムになった。まさに海峡を通り抜けるタンカー。多角的原油満載だから事故に気をつけながら作りました」(この項つづく)