<9>私も師匠として幹部の師匠方と披露口上に並んだ時、夢のような感じでした
談幸はその後、寄席の常連出演者となった。九月下席も末広亭の昼席に出演した。
「当然のことながら、寄席には不特定多数のお客さまがいらっしゃる。10日間出ていると、日々のお客さまの正直な反応が楽しみなんです。立川流の落語会は一門しか出ないので、お客さまが特定少数になってしまう。その点、寄席は毎日変わりますから、昨日はあれだけ笑ってたのに、今日はまるで笑わないこともある。お客同士が示し合わせてるんじゃないかと思うほど、受けたり受けなかったりする。90歳を過ぎても寄席に出てらした桂米丸師匠でさえ、『寄席は怖いよ』とおっしゃってました。改めて怖さを感じてます」
談幸は持ちネタが多いことで知られる。それは落語協会に在籍していた頃、先代柳朝、志ん朝、先代円楽などのもとへ稽古に通っていたからだ。
「おかげで、三遊亭、古今亭、林家などの噺を覚えることができました。今、芸協の若手から『あの噺を稽古してください』と頼まれると、喜んで引き受けます。それが稽古をしてくれた師匠連への恩返しだと思って」 =つづく