<70>野崎幸助さんのミエで新装したピンクの壁、予算は2500万円
彼が塀を造り直したきっかけは「紀州のドン・ファン」第1弾が出版されたあとにネットで別の家が掲載されたのが原因だ。グーグルマップで検索すると、同じ朝日ケ丘でも200メートルほど離れたところにある会社社長の豪邸を示した。それが気に食わなかったのだ。
ドン・ファンの自宅は資産家とは思えないほど質素な2階建てで庭も広くない。もともと借金のカタに取った中古の家で、前の奥さんが内装を大幅に変えた結果、外観は日本家屋であるのに中は洋風テイストの不思議な空間になっている。垣根風の塀はところどころ壊れている部分があったので改装するのには反対はしないが、新装とはミエっ張りとしかいいようがない。
もっとも、工事はなかなか進まなかった。
「ここが違う。ダメだ、やり直せ」
ドン・ファンは業者に何度もダメ出しをし、そのうち中止すると言い出した。
「参りました。なんとか助けてくれませんか」
施工会社の若いK社長はドン・ファンと仲が良く、自宅に招かれたりホテルの食事会に呼ばれていた。ドン・ファンの周りにいるのはお金のことしか考えないようなやからがほとんどだが、Kさんは温厚で知識もあり、私は仲良くさせてもらっていた。