<89>家政婦を疑った捜査陣 M警部補の目は笑っていなかった
通夜が行われる29日の朝、私とテレビディレクターのスーさんは、野崎幸助さんの自宅に向かった。
自宅は再び家宅捜索中で、喪服を取りに来た私と、門番役の警官が押し問答をしていると、背後から別の2人組の刑事に声をかけられ、捜査に協力をするよう打診された。
「もしかしてドン・ファン殺害の犯人の目星がついているんじゃないの?」
カマをかけてみた。
「いやいや、そんなことはありません」
そうは言うが、口調が自信にあふれているようにも感じられる。
「大下さんを疑っているんじゃないですか?」
「どうしてですか?」
苦笑するM警部補の目は笑っていなかった。
「だって、供述がコロコロと変わるんでしょ」
「はあ?」
とぼけているが、図星であることが、表情から読み取れた。