<89>家政婦を疑った捜査陣 M警部補の目は笑っていなかった
「覚醒剤で捕まった人間が大下さんの周囲にはいますからねえ。彼女をマークするのは当たり前じゃないんですか?」
「……」
M警部補は黙っている。
「あのねえ、大下さんは社長から『あんた認知症が入っているんやないか? ボケてんのとちゃうか』ってイジられていたんですよ。さっき言ったことと今言うことが変わるんですから」
「本当ですか?」
「そんなことも知らないで軽はずみなことをしたら、大変なことになりますからね。どうです? 情報交換をしませんか?」
「まあ、そうしたいんですけれどもねえ」
教える気などさらさらないことぐらい分かっている。ドン・ファンが亡くなってから早貴被告を逮捕し、今に至るまで、警察が私に事情聴取したことは一度もない。
「事件を解決したかったらドン・ファンを一番知っているヨッシーを真っ先に呼ぶべきだろうが、やっぱり警察は意地を張っているんやろうな。それに警察が何を聞くかでヨッシーに捜査状況が漏れてしまうのを恐れているんやろ。アホや」