名優・宝田明さん87歳で死去…日刊ゲンダイに語っていた「平和への思い」
<戦後70年間、なんとか平和を守ってきたのが、いよいよタガが緩んできた。かつて毎朝朝礼で満州から東を見て、まだ見ぬ憧れの祖国に深々と頭を下げた。その国がなぜこんなことになったのか。戦後生まれの安倍首相は、公約に掲げて選挙で勝ったわけでもないのに、たかが閣議決定で集団的自衛権の憲法解釈を変えてしまった。ガラガラと音を立てて、大切な何かが崩壊しつつあると感じます>
<当時僕は小学生で旧満州国のハルビンに住んでいましたが、終戦とともにソ連軍がなだれ込んできた。近所の奥さんが襲われているところも目撃したし、それが原因で彼女は精神をおかしくしてしまった。結局戦争というのはね、戦闘員だけでやるわけにはいかないんです。どうしたって無辜の民にまで累が及び、虫けらのように命を落としたりする。戦後生まれの議員には、そこをもう一度勉強し直してもらわないと>
<略奪にきたソ連兵に、頬に銃口を突きつけられたときの冷たさ。真の恐怖を前にすると歯がガタガタ震えて止められないんです。兵隊だった兄の姿を求めて列車を迎えに飛び出したときには腹を撃たれました。彼らは民間人の子供である私をダムダム弾(激しい肉体損傷を伴う非人道的弾丸で、ハーグ陸戦協定で使用を禁じられていた)で撃ったのです。ロシアには素晴らしい文豪や作曲家、映画があるのに、この体験のせいで今見ても吐き気がしてしまう。戦争が憎悪しか生まないというのは、こういうことです>
今もウクライナ侵攻を命じ、罪のない人々の殺戮行為を続けているプーチン大統領にも強く訴えたかったに違いない。