甲斐よしひろ流ロックの本質と哲学は時代を超える 今もステージに立ち続け
甲斐バンドは「ベストテン」に一度出演しているが、毎週水曜日にDJを務めていたNHK-FM「サウンドストリート」のスタジオからの生中継で、黒柳や久米宏とのトークはNGとするなど、こだわりをみせたものだ。構成作家のチャッピー加藤氏はこう言う。
「甲斐さんは洋楽ロックを聴いて育った人ですけど、一方で、小学生のとき、紅白歌合戦で歌われた曲の歌詞を全部暗記していたという逸話があるほど、歌謡曲好きでもあるんですね。大ヒットした『HERO』や『安奈』などは、キャッチーなサビがあったりと、歌謡曲っぽいところがあるんですが、そんなバックグラウンドも影響しているのかもしれません」
70年代、福岡から上京してきた若者から見た東京という街、その時代性を、独特のハスキーボイスで歌う甲斐の歌が浮き彫りにしたのを中高年世代なら覚えているはずだ。
■「裏切りの街角」はどこの街角?
「『裏切りの街角』の街角はどこなのか、ご本人に伺ったところ、溜池から旧首相官邸に行く間の坂道だという答えでした。当時甲斐バンドが所属していた東芝EMIのスタジオがあった辺りです。売れなければという重圧や不安と闘いながら毎日その通りを歩いていたそうで、そんな気持ちを曲に反映させて描いたら、彼らの最初のヒット曲になったのだと。甲斐さんは以前、『リリースした作品がちゃんと支持される。ロックの本質はそこだと思っています』と語っていました。目指すは記録、記憶の両方に残る作品。その時代で一番、疾走感がある音楽、時代を駆け抜ける音楽をつくるんだと志を高く持っていたのですね」(加藤氏)
甲斐よしひろは今もステージに立ち続け、5月には恒例のライブツアー「甲斐よしひろ Billboard Live & Bottom Line 2022」に出るという。