歴代の天皇が学んだ「帝王学」は時代や制度によって大きく変わった
皇太子の「帝王教育」に影響を与えた人物がもう1人いる。小泉信三(慶応義塾塾長から1949年に東宮御教育常時参与)である。教育係としてハロルド・ニコルソン「ジョージ5世伝」や福沢諭吉の「帝室論」などを講義した。考えてみれば立憲君主としての心構えを説くのだから、バイニング夫人の授業とはずいぶん違ったはずである。
今上天皇には東宮御学問所のように特別な教育はなかった。基本は学習院での教育と、大学院時代にオックスフォード大学マートン・カレッジに留学したことだろう。ただそれ以外に、父の明仁皇太子自らが「帝王学」を学ぶ環境づくりをされている。
例えば、浩宮さまは12歳ごろから漢学者の宇野哲人東京大名誉教授から論語を学んでいるが、それ以外にも機を見て比較文化史研究者の芳賀徹氏、民族学者の大林太良氏、科学史の伊東俊太郎氏、万葉学者の五味智英氏らからご進講を受けている。いずれも東大教授だったが、おそらくこうしたことが長く続いたのだろう。
また、昭和天皇からも学んだと渡辺允元侍従長が記している。