故・夏目雅子さんの正直さ 1年ぶりの仕事の理由を聞くと「子宮にヘンなでき物ができて…」と
これまで多くの女優と会ってきた。すてきな個性の方がたくさんいたが、この坂口さんのほかに、自分の中で「こんなに素直で正直で、かわいい女性は初めてだ」と思ったのが、1985年に27歳の若さで亡くなった夏目雅子さんだ。
もう“時効”だから許されると思うが、初めて会ったのは、あるテレビドラマの取材で、スポーツ紙6紙の記者だけが集まった時だ。僕もかけ出しの記者で、彼女が「1年ぶりに仕事をする」と語り始めた。なぜ1年ぶりなのか、その間、何をしていたのかと当然質問するのだが、とても素直な返事が戻ってきた。彼女の言葉をそのまま再現するとこうだ。
「あの、子宮にヘンなでき物ができて、長くかかってしまって……」
ちょっと待ってと彼女の二の句をとどまらせ、6人で話し合い、聞かなかったことにすると申し合わせて説明した。
「具体的なことを言わなくても大丈夫ですよ。女優さんだから、体調を崩して長引いたとか、なんとか」
夏目さんは、「ああ、そういうものですか。ありがとうございます」と礼を言ってきた。本当にスレていない、取材した記者はみんな、その時、いっぺんにファンになってしまっていた。
あの時の記者仲間はこの話を覚えているだろうし、彼女が亡くなった後も内緒にしてきたに違いない。古き良き時代のこと……今なら「衝撃の告白」といったタイトルでYouTubeか何かで伝えただろう。