著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

香川照之氏の生謝罪で「不快」なるワードに感じた危うさ 性加害への認識が古いのではないか

公開日: 更新日:

 がしかし、ぼくはそこで複数回使われた「不快」なるワードに危うさを感じた。性加害についての認識が古いのではないか。不快な思い。不快感。不快に思われたのでしたら。「不快」というワードを含む表現は、政治家や企業トップが不祥事や失言の際に多用する。一見良心に訴えているような印象を与えるが、今回はそこが間違っている気がしてならない。

 例えば万引って、もうそれだけでアウトですよね。相手が不快かどうかは関係ない。行為自体が犯罪だと誰もが認識している。たとえ被害者が億万長者で、盗んだのが100円玉ひとつだったとしても。その犯罪を大目に見てくれるかどうかは、また別の話。

 報道を見るかぎり、ホステスの女性に香川さんがしたことは、その事実だけですでにアウト。「不快」かどうかではない。もちろん「銀座だから」でも「銀座なのに」でもない。同意なく他人のカラダに触ってはいけない時代にぼくたちは生きているのですから。クラブの高い料金にも「同意なきボディータッチ代」は含まれていない。わかってんのかなTBSは。


 ところで、謝罪における「不快」には「不徳」がセットで付いてくることが多く、そのたびにぼくは鼻白んでしまうのだが、香川さんの謝罪に「不徳」は出てこなかった。安直に紋切り型の表現に頼らない姿に、窮地にあってもさすがは香川照之! と自著での名文家ぶりを思い出した。

 でもその後にのぞいた所属事務所の公式HPでは、誰が書いたか「全ては本人の不徳の致すところ」という政治家ライクな常套句が出てきてゲンナリ。彼の抱える孤独を案じたのでした。改めるべきところは改めて、またテレビに戻ってきてほしい。切に。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊川怜の元夫は会社が業績悪化、株価低迷で離婚とダブルで手痛い状況に…資産は400億円もない?

  2. 2

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  3. 3

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  4. 4

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  5. 5

    斎藤元彦知事ヤバい体質また露呈! SNS戦略めぐる公選法違反「釈明の墓穴」…PR会社タダ働きでも消えない買収疑惑

  1. 6

    渡辺裕之さんにふりかかった「老年性うつ」の正体…死因への影響が報じられる

  2. 7

    水卜ちゃんも神田愛花も、小室瑛莉子も…情報番組MC女子アナ次々ダウンの複雑事情

  3. 8

    《小久保、阿部は納得できるのか》DeNA三浦監督の初受賞で球界最高栄誉「正力賞」に疑問噴出

  4. 9

    菊川怜は資産400億円経営者と7年で離婚…女優が成功者の「トロフィーワイフ」を演じきれない理由 夫婦問題評論家が解説

  5. 10

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”