著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

dj honda本人に訊いてみた いつも何かに怒っていた若き日を今どう思うか

公開日: 更新日:

「ずっと続けることが音楽だもん。怒ろうが笑おうが、音楽は音楽で続けなきゃ。だったら、怒らないほうがいいよね」

 そして、10年ほど前から活動をともにすることが多いジャズトランペッター日野皓正の影響もあるという。

「日野さんに連れ出されてから、この10年はゴルフに熱中してる。ゴルフなんて誰がやる? って悪態ついてた俺がだよ。コロナ前なんて年100回以上コースに出た。笑っちゃうよね」

 hondaが全米チャート入りを果たした98年、小林信彦が週刊文春で始めた連載コラムのタイトルは「人生は五十一から」。その時、ぼくは30歳。人生の妙味を知るまであと20年もかかるのかと、ため息をついたものだ。

 ところでボーボワールが名著「老い」のなかで、青年期を過ぎた知的職業人に対してやたら辛辣なのはよく知られている。いわく「学者は40歳に達すればすでに老いているのである」と。だが、画家と並んで晩成説を認めた例外が音楽家だ。「老齢期のバッハの諸作品は彼の最も美しい作品のなかに数えられる」と述べただけでなく、ベートーベンは最晩年50代半ばの四重奏曲で「それまでの自己を凌駕」したとまで断言している。

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