サッカーW杯はABEMAがNHK・民放に圧勝の衝撃! 地上波からスポーツ中継が消える日
日本のカタールW杯が終わった。
ドイツ、スペインに大金星を挙げ、E組首位でグループリーグを突破。日本中が歴史的ジャイアントキリングに沸いた。しかし、8強入りを懸けた決勝トーナメント初戦は、PK戦にもつれ込む死闘の末、クロアチアに惜敗。またしても世界の壁にはね返された。
衝撃的なシーンの連続だったが、テレビ局関係者は別の意味で大きな衝撃を受けた。
■初戦の視聴率は10ポイントも下落
「本当に大勢の方にご覧いただきまして、そして日本代表が勝利を収めたということで、ダブルの喜びでいっぱいです」
これは、初戦ドイツ戦を生中継したNHKの林理恵メディア総局長のコメントだ。試合の平均世帯視聴率は35.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区=以下同)を記録。FIFA(国際サッカー連盟)の発表によると視聴者数は2619万人に上ったというが、前回2018年ロシア大会の日本-コロンビア戦の視聴率は48.7%だった。放送時間はコロンビア戦が平日の午後9時、今回のドイツ戦が午後10時キックオフ。条件にそれほど大きな差はないのに、今回は視聴率が10ポイント以上も下落しているのだ。
「理由は明白。(全64試合を無料で生配信するネットメディアの)ABEMAに視聴者が流れたからです」と説明するのは元NHKスポーツプロデューサーの杉山茂氏である。
テレビと違い、スマートフォンやパソコンで、いつでもどこでも視聴できるウェブメディアが利用者に与えるメリットは大きく、ABEMAはドイツ戦の視聴者数が1000万人を超えたと発表した。また、フジテレビが中継した午前0時キックオフのクロアチア戦は視聴率34.6%。一方、ネットで生中継したABEMAの視聴者数は2300万人を超え、過去最高を叩き出した。これは、NHKが中継したドイツ戦の視聴者数に肉薄する数字だ。テレビ局の独壇場だった巨大スポーツイベント中継をネットメディアが脅かしている。
これまで五輪やW杯など大々的な国際スポーツイベントの放映権料は、NHKと民放各局でつくる「ジャパンコンソーシアム(JC)」が一括購入、その後各局が放送枠を決めてきた。しかし、近年は放映権料の高騰に伴い、民放局が尻込みするケースが増えている。
実際、今回のW杯は放映権料を巡ってFIFAとの間に入る電通とJCで折り合いがつかず、一時は交渉が暗礁に乗り上げた。日本テレビとTBSは早々と撤退。テレビ放送すら危うくなっていたところにABEMAが参入し、200億円超とされる大金を積んで放映権を獲得した背景があった。アジア最終予選もホーム試合のみテレビ朝日が中継。アウェーの試合は放送を断念し、日本が本大会出場を決めた敵地でのオーストラリア戦も、ファンは有料映像配信サービス「DAZN」での視聴に限られた。