岸井ゆきのが聴覚障害のボクサー熱演 映画「ケイコ 目を澄ませて」が描く時代性とメッセージ性
映画は16ミリフィルム独特のざらついた質感の映像と、劇伴音楽を排したストイックな作風で、迷い続けながらもひたむきに努力を続けるケイコの揺れる心情を描いていく。
「努力が報われるとか、勝利を目指すのがスポーツ物によくあるパターンですが、本作は違います。選手生命もジム経営もいつかは終わるものですが、その先も人生は続くし、前向きに生きていくことはできる。良くも悪くもゴールに達して終わりじゃないんだと気づかせてくれます。コロナ禍で家族や生業を失った人があふれる現在、この映画のメッセージはとても力強く、温かく感じられるのでは」
原作から時代設定を現代に変更し、劇中ではあえてコロナ禍で難儀するヒロインの姿も描写した。単純なスポ根とは一味違う、時代性豊かなボクシング映画といえそうだ。