iPS細胞で心臓そのものをつくり出すのは極めてハードルが高い
4月13日に開幕する大阪・関西万博で、最新の医療技術を紹介するパビリオンを計画しているパソナグループは、iPS細胞からつくった「ミニ心臓」を展示の目玉にするといいます。大阪大学の澤芳樹特任教授などのグループがiPS細胞からつくった心臓の筋肉の細胞=心筋細胞を使って開発したものです。
ただ、報道を見る限り、「ミニ心臓」と呼ぶにはやや語弊があるといえそうです。このミニ心臓は、大きさが直径3センチで、実際の心臓のように拍動するのですが、心臓としての構造や機能は持っていないのです。実際の心臓という臓器そのものを小さく再現したものではなく、iPS細胞を使って収縮と拡張を繰り返す心筋細胞の塊をつくったといえばいいでしょうか。
未分化細胞であるiPS細胞は体のどんな臓器にもなることができるのはたしかですが、iPS細胞を使って心臓そのものをつくり出すというのは限りなく困難で、まだまだ夢物語といえます。心臓という臓器は、心筋細胞のみで構成されているわけではないからです。
心臓という臓器は、筋肉だけをシンプルに考えたとしても、収縮と拡張を繰り返すポンプとして働く心筋だけでなく、一定のリズムで収縮するように電気信号を伝える刺激伝導系という組織があり、これを構成する細胞を特殊心筋と呼んでいます。