つかこうへい氏のセクハラ、パワハラ全開の芝居の裏にはいつも「愛」があった
つか氏の芝居は台本を書かず、つか氏が口から発するセリフをその場で役者が覚えていくという、口立てという手法で作られてきた。だから再演のたびに内容が変化していく。
現在「飛龍伝」として知られているのは、全共闘女闘士神林美智子と機動隊員山崎一平の悲恋の物語であり、広末涼子、黒木メイサ、桐谷美玲など、新進女優の登竜門として知られ、つか氏はさながら演劇界のつんく♂のように女優を大きくしていった。
今回の「初級革命講座─飛龍伝」はその原点。1973年に平田満、三浦洋一、井上加奈子で初演された。当時皆さんは19歳。つか氏は24歳であった。
当時の学生運動の武器は角材と投石。その投石用の石に「飛龍」という石があった、という架空の話をメインに、時代に挫折した2人の男、元闘士で石磨き職人の熊田留吉と元機動隊員山崎の確執の物語である。
つか氏の芝居は当時を反映し、セクハラとパワハラのオンパレードで、学校差別に地方差別、言葉の暴力で罵倒し合いなじり合う。もちろんそれは逆説で、その裏に屈折した愛情や友情が噴出し、言葉のエネルギーとともに観客を圧倒する感動を生む。
セリフ量は半端ない。67歳でやる芝居ではない。しかし若い頃憧れたつかこうへいの言葉は素晴らしく心地よい。全共闘世代の方は滂沱されるであろう。目撃されたい。