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てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。「芸能界」というビジネスは、いかにして始まったのか。貴重な証言を収録した「芸能界誕生」(新潮新書)。伝説の番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」を基に描く青春群像ノンフィクションノベル「史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記」(双葉社)。2つの最新著が絶賛発売中!

夫の教えを支えに…ラスボス・小林幸子が貫く「楽しんでくれれば」の信念

公開日: 更新日:

 そんな苦境の中、ニコニコ動画から出演のオファーが舞い込んだ。もちろん、小林はニコ動の存在など知らない。だが、信頼するスタッフが「面白い」と言っているから乗った。「ネットの方に行ったときに、旧態依然としている人たちからは“落ちぶれた”と言われた」(フジテレビ系「直撃!シンソウ坂上」19年10月10日)という。

 まだ、トップクラスのタレントがネット動画にほとんど出ることがなかった時代だから無理もない。しかし、その反響はすさまじかった。彼女が投稿した動画はわずか3日間で100万再生を記録したほど。生で歌うことが難しいと言われる「ボカロ曲」にも挑戦。「脳漿炸裂ガール」を「脳漿炸裂バーサン」に変えて歌うと喝采を浴びた。コミックマーケットにも参加すると、その日の記録となる長蛇の列ができた。

 そうした挑戦の最初にはもちろん、背に腹は代えられないという事情もあっただろう。けれど一番の原動力になったのは「面白そう」という動機。「みんなが楽しんでくれるならばそれでいい」(「シネマトゥデイ」23年9月1日)という信念を彼女は貫いている。そして、その決断を支えているのは夫から教えてもらった「思い込みを捨て、思いつきを拾う」という言葉だ(「直撃!シンソウ坂上」=前同)。

「思い込みがあるから新しいものに挑戦できない」--。少しでも面白そうだと感じる「思いつき」に乗った結果、小林幸子は“復活”を果たし、ついには15年、ボカロ曲「千本桜」で紅白の再出演に至ったのだ。

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