平和から乱世の世へ。「光る君へ」のラストシーンは文学への覚悟を問われているようだった
紫式部の母の死や道長との出会い、そして恋、清少納言との友情など、おそらく史実にはなかった創作が見事に展開をドラマチックにし、また大きな伏線となってうねっていく。そこら辺「あり得ない」と否定する向きもあるが、それでは歴史ドラマは作れない。実際記録にある歴史は一切変えずに、その書かれていない裏側に想像力を働かせる。ここに歴史物の醍醐味がある。何より素晴らしいのは、シーンとシーンのつながりが出来事でつらなるのではなく、登場人物の心理で積み重ねられていることだ。
後半は源氏物語執筆と人間模様。NHKらしからぬエロチックな展開もさらりと大胆にかつ優雅に描かれていた。
物語を書き切って「もう書くものがない」と呟く式部の虚脱感。そして最終話のタイトル「物語の先に」。死に近づく道長に生きる希望をもたせるため枕元で語って聞かせる物語。書き手としての大石氏が式部に自分を重ね合わせ、物語の力に希望を見る。
最後に老いた清少納言と式部の2人が語り合うシーンは劇団二兎社で共に競った戦友、永井愛氏と大石氏がしゃべっているようだった。
ラストは迫り来る戦乱の時代を予感させて終わる。平和から戦乱へ。その中で物語が文学が、いったいどうすればよいのか。問われているようなラストであった。