プリンセス天功さん「2代目引田天功」継承44年…いま明かす危険と隣り合わせのステージの数々
プリンセス天功さん(イリュージョニスト)
イリュージョニストの引田天功の2代目、プリンセス天功さんは世界各国で数々のイリュージョンを披露している奇才。今も危険と隣り合わせの日々を送るが、ステージについては克明に記憶しているという。興味深いイリュージョンの現場とは……。
私にとって青天の霹靂は2代目引田天功になったことです。最初はCBSソニーからアイドル歌手(朝風まり)としてデビューしたので、まさかマジシャン、イリュージョニストになるなんてまったく思っていませんでした。2代目を引き継ぐことになって人生が180度、いや360度、グルグル1周するくらい変わった。それに一番驚いたのは私自身です。
2代目に選ばれたのは女の子の弟子は私一人だったことや、男性よりは女性の方が興味を持ってもらえるという周囲の期待もあったからです。初代の親族の方にも「頑張ればできる」とポンと軽くトロッコを押し出すような感じで言われ、やるしかない状況でした。
そして決まったその日から徹底的に勉強を始めました。マジックのための分厚く何巻もある「ターベルコース」という百科事典があります。まずそれを手に入れ、頭に叩き込みました。
それから手先で行うマニュピレーション、イリュージョン、手妻といわれる魔術や奇術、手品、さらに中国やエジプトの何千年の歴史があるマジック……。さらに初代が持っていた資料や世界各国から送ってもらった文献のコピーも全部揃えて。それは1日24時間勉強しても終わらないくらい膨大な量で、今も勉強中です。
最初は何も知らないし、マジックの技術もありません。例えば、初代は瞬時に20羽のハトを出すマジックをやっていました。わかりにくいかもしれませんが、一つネタをバラしますと、あれは糸をどう操るかなんです。ハトを飛ばすために、糸に1~80番の番号が振ってあります。その糸が何番なのか触っただけで瞬時に取らないといけない。
でも、空中に湿気があると糸が手にくっついて取ることができなかったりします。ですから湿った環境なのか、カラカラに乾燥した環境なのか、それに合わせて糸の素材を選ぶところから始まる。そういう細かい技術を習得しないとマジックは失敗します。ものすごく計算してやらないといけない。
それでも、勉強して習得すればいいので、恐れのようなものはなかったですね。むしろ悩んだのはコミュニケーションです。例えば、アメリカに行った時です。アシスタントがつねに10人、20人います。日本人なら大丈夫でも、外国人ではそうはいかない。仮に彼らが失敗したら私がカバーしないといけないことが多いんです。そのために180度に目くばせできる訓練をしておくとか、まるでアスリート並みと言っていいくらい訓練しました。