鈴木亮平×有村架純のGW映画「花まんま」は令和版「男はつらいよ」だ
「花まんま」は、舞台こそ大阪だが、俊樹を演じる鈴木亮平の妹のことになると周りが見えなくなる、直情的な愛情の傾け方はほとんど“現代版寅さん”。兄の愛情を、素直に受け止めるフミ子役の有村架純は庶民的な感じも含めて、やはり“現代版さくら”のようにも見える。ここでは俊樹と幼なじみのお好み焼き屋の娘・駒子(ファーストサマーウイカ)の結びつきも語られるが、あくまで脇ネタ。原作と同じく、フミ子の中に宿る、もう一人の女性・喜代美とその家族の物語が重要になっていく。
結婚式に向けて謎の行動を見せるフミ子に、心穏やかではない俊樹のうろたえぶりが寅さんを思わせる。原作の世界観を基本にしながら、題材の料理の仕方を令和版「男はつらいよ」に持ってきて、笑って泣ける感動作にしているのがうまい。
前田哲監督は「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(18年)や「老後の資金がありません!」(21年)など、社会問題を絡めながら、明るいエンタメに昇華させる作品を製作。今回の映画も監督が長年温めてきた企画だというが、彼の練達の職人技がさえた一本になっている。