65歳の肺がん患者「絶対に治したいと手術も抗がん剤も頑張ったが…」
緩和ケア病棟では「なにもしない」治療が中心となります。栄養状態を改善する治療もありません(当院では、この部分も力を入れます)。
そのため、体重はさらに減少。息苦しさに対する薬が増えると眠くなる症状も出てくるので、一日中寝て、起きているのは、周囲から起こされた薬の時間だけ。
そこで、家族との話し合いになりました。男性が、ご家族に訴えました。
「がんに打ち勝つために、入院して、手術を受け、きつい抗がん剤治療を頑張った。5月に苦しくなった時も治すつもりで国立がんセンターに入院した。しかし結果としては痩せて、骨と皮みたいになってしまった。今の病院では治療につながることは何もしてくれない。それなら、ここにいても仕方がないのではないか。しかも病院だから、好きなたばこを吸えない。看護師には『(病気は)たばこを吸っていたからだ』と言われる」
介護に不安を持っていた家族も「お父さん、帰ってきていいよ」となり、7月末に急きょ退院、在宅療養開始となりました。
自宅では、ご本人はお気に入りの茶の間に介護ベッドを置き、リラックスして休んでおられました。私たち在宅医療チームは男性の栄養状態を支えるためにさまざまな方法を実施。少しではあるものの体重が増えました。ご本人の希望で、リハビリの理学療法士の先生も定期的に来られることとなりました。