慶応幼稚舎の“お受験”は今年も過熱 コネは必ずしも必要ではなくなってきた
「今年は慶応の当たり年。こんなことは一生に一度かも」と感無量なのは慶応大の文系教授。夏の甲子園で慶応高が107年ぶりの優勝を果たしたのに続き、東京六大学野球で早稲田を破り4季ぶり40度目の優勝。神宮球場に駆けつけた文系教授は学生、OB・OGたちと肩を組み慶応定番の応援歌「若き血」を合唱した。
「慶応幼稚舎出身の広瀬隆太君が三回に先制2ランを打った時は早くも涙が出てきた」と振り返る同教授も幼稚舎のOB。生粋の慶応ボーイだ。広瀬選手はソフトバンクからドラフト3位指名を受け、幼稚舎初のプロ野球選手が誕生する。
神宮のスタンドには清原和博氏の長男・正吾(大3)、さらには甲子園出場メンバーの次男・勝児(高2)の姿も。いずれも幼稚舎から慶応である。
例年以上に注目を集める幼稚舎の24年度入試がこの1~10日、行われた。期間が長いのは女子、男子、生まれ月によって試験日を分け、成長の度合いによる不公平をなくすためだ。前年度は144人(男子96人、女子48人)の定員に対し志願者数は1584人でちょうど11倍。「今回はさらに上がっているのでは」と“お受験”に実績のある幼児教室の経営者は予測する。
「コロナ禍はおさまったとはいえ、その影響はまだ残っていて、相変わらず親たちの安定志向は強い。大学までの進学が約束されているメリットはやはり大きい」
子どもの将来を考えれば、慶応のブランド力は魅力だ。特に慶応の同窓会「三田会」の存在は心強い。一流企業各社に慶応OB・OGが数多く在籍し、結束力は有名校の中でも圧倒的。後輩への面倒見もいい。昇進でも強みを発揮する。上場企業の社長のうち、慶応出身は340人台。2位の早稲田を約80人も上回っている。そこまで行き着く確率はたとえ小さくても、バラ色の未来への可能性を小学校入学の段階でゲットできるのだ。幼稚舎人気が高まるのもうなずける。
■保護者面接もなし
「挑戦する家庭が増えているもう一つの理由は、コネがなければ合格できないという懸念が減っているからでしょう」(同)
かつて、「近親者に塾員(慶応の卒業生)がいないと合格は難しい」というのが幼稚舎受験の定説だった。単なる塾員というだけでなく、社会的ステータスが高いほど有利とされてきたが、「今は親がどんなアドバンテージを持っていたとしても影響はほとんどない」と幼稚舎関係者は話す。
以前は入学願書に祖父母の学歴まで書かせていたが、親族に関しては両親の氏名しか記入する欄はない。保護者面接もなくし、純粋に入試時の受験者本人のパフォーマンスだけで判定するようになった。それまでは最初からあきらめて、別の小学校にターゲットを絞る家庭も少なくなかった。いずれにしても、子どもたちの人生を左右する運命の合格発表は数日後である。
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