昭和感たっぷり! 築地「レンガ」のひき肉たっぷりのナポリタンに舌鼓

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第28回 築地

 素人が築地に買い物に行くようになったのは大江戸線の築地市場駅ができてから。30年ほど前になるが、そのころはマニアックな料理好きがプロに交じって早朝から買い物に来ていたという印象が強い。

 当時、六本木のバーで明け方まで飲んでいると、店のマスターから「築地に朝飯食いに行きませんか?」と誘われることがあった。若いバーテンダーを連れて築地までタクシーを飛ばし、朝からアジフライ定食。まあ、こうやって食べる朝飯のうまいことといったら……。

 それはともかく、そのころはまだ竹細工みたいな市場カゴを持ったプロがほとんどだった気がする。やはり豊洲移転以降、築地は食べ歩きといったイメージを打ち出して素人どころか観光客まで押し寄せるようになった。

 今回はその築地である。平日の午後2時過ぎだったが、もんぜき通りは人でごった返していた。ほとんどは外国人観光客だ。どこかで海鮮丼でも食うかみたいにのんきな了見じゃ、とてもありつけない。ほうほうの体で逃げ出し、知人に聞いて気になっていた店「レンガ」に飛び込んだ。

 場外市場のはす向かいの路地裏、まさしくレンガ造りの喫茶店。まわりは高級そうな和食屋、すし屋が並ぶ静かなエリア。4人掛けテーブルが6つ。女性中心のお客で席が埋まっているがウエートレスさんが親切に席をつくってくれた。

 ほとんどの客は名物のナポリタンを楽しんでいる。鼻の奥を刺激するこのナポリタンソースの香りにあらがうことは不可能だ。アタシは席に着くなりメニューも見ず「ナポリタンのセットを!」(コーヒー、サラダ、スープ付き1100円)。そんなに焦らなくても……看板娘が手で口を押さえながら笑いをこらえている。

ビロードの赤いソファ、クイーンのポスターとホール&オーツのBGM

 注文を受けてからパスタを茹でるからしっかりアルデンテ。でも、日本人向けの歯ごたえが絶妙。腕を振るうのはいつもにこやかなマスターの長谷川さん。お母さんから店を継ぎ、間もなく創業42年。店内はビロードの赤いソファ、壁にはデビュー当時のクイーンのポスター、そしてBGMはホール&オーツとくれば、いやが上にも昭和感が盛り上がります。アタシの青春だよ。

 そんな甘酸っぱいオジサンの思いなどどこ吹く風と若い男女がナポリタンをかっ込んでいる。そりゃそうだ。皆さん平成世代だもんね。「最近は外国人のお客さまが開店前から待っていることが増えました」。忙しいマスターに代わってベテランウエートレスさんが話してくれた。そういえばウエートレスって言葉使わなくなったね。でも、ここではやはりウエートレスが似合っている。

ウインナーがうれしい

 この店のナポリタンの特徴は今半のひき肉がたっぷり入ったトマトソースであえていること。ミートナポリタンといった重厚感。特別に取り寄せているケチャップは甘みが強く、まろやかな味わいになっている。ウインナーが入っているのがアタシら世代にはうれしい。食後は丁寧にサイホンで入れたトラジャコーヒー。昔は幻のコーヒーといわれた。深みとコクがあり後味はさわやか。

 大事なことを忘れていた。ここはトーストサンドイッチも絶品ですよ!

 (藤井優)

○レンガ 中央区築地2-15-15

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