著者のコラム一覧
内田正治タクシードライバー

1951年埼玉県生まれ。大学卒業後、家業の日用品、雑貨の卸会社の専務に。しかし、50歳のときに会社は倒産。妻とも離婚。両親を養うためにタクシードライバーに。1日300キロ走行の日々がはじまった。「タクシードライバーぐるぐる日記」(三五館シンシャ)がベストセラーに。

(23)英語教師の職を捨て“憧れのタクシードライバー”になった同僚の話

公開日: 更新日:

■あるとき、その語学力がアダとなった

 家業を手伝っていたころ、私のまわりには経済的にこんな“綱渡り生活”を送っている人はいなかった。タクシードライバーになってはじめて、そういうタイプの人に遭遇した。その意味では、お客との出会いを含めてさまざまな人間模様に触れることができたということも事実だ。社会勉強の機会を得られたことは間違いない。

 ほとんどのタクシードライバーが「デモシカ」でこの職業に就くなか、タクシードライバーに憧れて入社してきたという珍しい同僚もいた。前職はなんと高校教師。50歳で転職してきた。「子供のころからの夢。多くの人に出会って、世間のことを知りたいし、運転が好き」とすがすがしい表情で話していた。私を含めて多くの同僚は「もったいない。なにが悲しくてこの仕事に」という思いだったはずだ。そんな彼だが、思わぬところで「前職」がアダになってしまったことがある。彼の話はこうだ。

 ある日の午後のこと。浅草で3人の若い外国人女性客を乗せ、六本木方面に走らせていた。3人は車内で楽しげに話し込んでいる。途中、「原宿の竹下通りで楽しみたいがどの店に行ったらいいかわからない」という声が聞こえてきた。彼女たちが話すのは英語だ。会社の業務規則では、ドライバーからお客に話しかけるのは原則禁止なのだが、彼は親切心から思わず「○○が人気でおすすめですよ」と英語で割り込んでしまった。その途端、車内は凍りついたようにシーンとなってしまったという。彼にしてみれば「オー、サンキュー」くらいの反応を期待していたのだろう。

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  2. 2

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 3

    中森明菜が16年ぶりライブ復活! “昭和最高の歌姫”がSNSに飛び交う「別人説」を一蹴する日

  4. 4

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  5. 5

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  1. 6

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  2. 7

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  3. 8

    雑念だらけだった初の甲子園 星稜・松井秀喜の弾丸ライナー弾にPLナインは絶句した

  4. 9

    「キリンビール晴れ風」1ケースを10人にプレゼント

  5. 10

    オリックス 勝てば勝つほど中嶋聡前監督の株上昇…主力が次々離脱しても首位独走