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内田正治タクシードライバー

1951年埼玉県生まれ。大学卒業後、家業の日用品、雑貨の卸会社の専務に。しかし、50歳のときに会社は倒産。妻とも離婚。両親を養うためにタクシードライバーに。1日300キロ走行の日々がはじまった。「タクシードライバーぐるぐる日記」(三五館シンシャ)がベストセラーに。

(1)親子経営の会社が倒産…借金に追われ家も失い、残ったのは「運転免許」だけだった

公開日: 更新日:

 コン、コン、コンと助手席側の窓を叩く音。ガラス窓を開ける。

「恐れ入ります。ちょっと、トランクの中を見せていただきたいのですが」

 笑顔だが、目は笑っていない。相手が3人の警察官となれば、黙って従うしかない。心の中で舌打ちしながら、トランクを開ける。そしてクルマを降りる。

 ホテルから出てくる客を狙って並びはじめて1時間近い。前にいる2台のタクシーが実車(客を乗せること)になれば、自分の番というタイミングだった。警察官の狙いはすぐにわかった。4、5日前、タクシーのトランクの中から金属バットが見つかり問題になったのだ。

 だが、私が勤務する会社は「トランクルームも客室の一部」という方針が徹底されており、私物を持ち込むことは厳禁だ。「何も入っていませんよ」という私の言葉など意に介さずトランクルームを「捜索」する。

「死体でも入っているんじゃない?」「クスリじゃない?」「いやねえ、タクシー運転手って……」。様子を見ていた3人の中年女性が聞こえよがしに言う。後ろで待っていた同業者は自分のクルマを、気の毒そうな表情を見せながら私のクルマの前につける。

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