錦糸町「三四郎」で薄い琥珀色のチューハイが出てきたのは注文から10分後だった
第42回 錦糸町(墨田区)①
かつて映画少年だったアタシは週末になると決まってシティロードを携えて名画座巡りをしていた。
アタシはぴあよりもシティロード派。読み物が多くB級感が好きだった。アタシにとっての錦糸町は、洋画も邦画も新旧取り交ぜて多くの映画を見ることができる街だった。江東楽天地へ行けば「ダーティハリー」から「仁義の墓場」まで見ることができた。だが、問題は城南地区のおとなしい少年であるアタシ(ほんとですよ)が城東地区で一番の繁華街に一人で行くのが怖かったことだ。
だから必ず映画好きの友人を無理やり連れて行った。そんな危なっかしいイメージだった錦糸町に、酒を飲み、オイタが好きな年齢になると足しげく通うようになる。困ったものだ。南口の怪しいエリアばかりに通っているうちに気が付くと北口が大きく変貌していた。すみだトリフォニーホールができ、アートオブジェがそこかしこにおいてあるオシャレタウンに。
これが錦糸町? 川崎を思わせる変貌ぶりに戸惑ったが、東京スカイツリーの登場が大きく影響していることは想像に難くない。そんなことを考えながら南口へ出ると、昔から変わらない錦糸町のランドマーク魚寅が目に入る。心和むアタシ。そこをスルーして横道に入ると、今日のお目当て「三四郎」の立派な看板が見えてくる。