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内田正治タクシードライバー

1951年埼玉県生まれ。大学卒業後、家業の日用品、雑貨の卸会社の専務に。しかし、50歳のときに会社は倒産。妻とも離婚。両親を養うためにタクシードライバーに。1日300キロ走行の日々がはじまった。「タクシードライバーぐるぐる日記」(三五館シンシャ)がベストセラーに。

(26)「グラッチェ」こそなかったが…ケーシー高峰さんは本物の名医のようだった

公開日: 更新日:

 ただ、ドライバーにとって特別なのは、芸能人を乗せたときだ。そのときばかりは、家に帰れば家族も話を聞きたがる。私も一度だけ芸能人を乗せた経験がある。

■医事漫談のパイオニアだったケーシー高峰さん

 20年ほど前のこと。2019年に亡くなったが、タレントのケーシー高峰さんを乗せた。若い方には馴染みがないかもしれないが、ケーシーさんといえば、白衣で医者に扮した医事漫談のパイオニアだ。60代以上の方なら「笑点」などで演じたエロいネタで笑ったことがあるはずだ。吉永小百合さん主演の「夢千代日記」でのシリアスな演技でも高い評価を得ている。

 そのケーシーさんがマネジャーらしき人と一緒に上野駅で乗ってきた。そして「世田谷の砧スタジオまで」とひと言。まだカーナビのないころのことだ。「申し訳ございません。そちら方面は不案内でして……」と私が言うと「運転手さん、大丈夫。案内するからそこの高速に乗って」と言う。途中、高速の分岐点などでも優しい口調で適切な指示をしてくれた。2人の会話に耳をそばだてていたわけではないが自然に耳に入ってくる。

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