インフルエンザの猛威を振り切る「2つの知恵」…感染者数は統計史上最多も肝心の薬は不足
インフルエンザが大流行している。全国各地の医療機関は、子供から高齢者まで感染者が殺到していてパンク寸前だ。ウイルスがひたひたと忍び寄る中、肝心の薬は不足する。どうやってこのピンチを乗り切るか。
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厚労省によると、先月29日までに報告された1医療機関当たりのインフルエンザ患者数は64.4人で、前の週より21.7人増えている。昨年同期に比べると約3倍で、1999年に統計を取り始めてから最多だ。
インフルエンザの感染は例年、1~2月にピークを迎えるが、今シーズンは感染の広がりがとにかく早い。1医療機関当たりの患者数が30人以上だと「警報レベル」とされ、すでに全国43都道府県が「警報レベル」になっている。
都道府県別では、大分が最多の104.8人で、以下、鹿児島96.4人、佐賀94.4人、熊本92.6人、宮崎90.2人と九州は軒並み80人超。3大都市圏では、東京(56.5人)と大阪(67.5人)は九州ほどではないものの、愛知は82.4人で九州レベルに迫る感染ラッシュだ。
全国的な感染の広がりから、先月29日までに全国5000カ所の医療機関に報告されたインフルエンザ患者数は31万7812人。前週比10万7000人近く急増した。
■学級閉鎖4400件、子供から大人に拡大か
それにしてもインフルエンザの感染が例年以上に急拡大しているのはなぜか。医師で医療ジャーナリストの富家孝氏が言う。
「2020年から新型コロナウイルスが猛威を振るったため、手洗いとうがいを徹底し、マスクや消毒といった感染対策も定着したことで、新型コロナ禍においては、インフルエンザの感染が強く抑えられました。そのため幼い子供を中心にインフルエンザに対する免疫を持たない人が一定数いるのでしょう。そんな子供を中心に学校や保育所などでインフルエンザ感染が広がり、そこから家族をはじめ周りの大人が2次的に感染しているのだと思います」
前述した厚労省の定点調査では、保育所や学校などの学級閉鎖も調査。今シーズンはまだ暑さが残る10月7日の週に早くも学級閉鎖が100件を超えて、11月半ばからググンと増え、12月1週目には1000件を突破した。冬休み前に4411件の学級閉鎖が実施された12月16日の週は、学年閉鎖も1251件に上っている。なるほど、子供のインフルエンザ感染の拡大が急ピッチで進んでいる。
インフルエンザに感染した人が入院した場合、どんな状態か。同じ厚労省の調査では、先月29日までの1週間にICUに入室したのは、前の週に比べて121人増の259人で、人工呼吸器が使用されたのは同63人増の139人。さらにインフルエンザの重い合併症でけいれんや意識障害を起こし、最悪の場合、30%が死に至るインフルエンザ脳症のチェックに必要な頭部CT検査などが実施、あるいは予定されたのは625人。前の週より226人と急増したのだ。
これらは肺炎や脳症などが疑われる重症例で、入院全体の2割を占めていた。感染をこじらせたケースが少なくないことが見て取れる。
インフルエンザは冬になれば避けて通れない感染症とはいえ、今年の流行はシャレにならない。改めて防御策を頭に入れておこう。どうするか。富家氏に聞いた。