昭和の名残を歩く…「治安が悪い」「買い物難民」「高齢化の波」という現実
いちょう団地
神奈川県横浜市西部にあるいちょう団地は、1970年代に建てられ、外国にルーツを持つ入居者が多い。かつて難民センターが近隣にあったこともあり、団地がつくられた当初から東南アジア諸国などの難民を受け入れた。現在ではベトナムやカンボジアなどの国から来た人々が、全世帯の2割を構成している。
昼間に訪れたのにもかかわらず、子供が遊ぶ姿は見えず、静まり返っていた。団地内にたたずむスーパーも今や閉店し、団地の商店街の賑わいも過去のものとなっている。
その商店街の中に、ひときわ異質に見える店がある。東南アジアの食料品を中心に扱う店だ。カンボジア人の男性店主に話を聞いた。
■国籍問わず押し寄せる高齢化の波
「ここには40年近く住んでいます。このお店を開いたのは20年ほど前。この団地をずっと見てきましたが、老人ばかりになりました。日本人だけではなく、我々外国人も高齢化しています。若くて元気のある人は結婚して家を買って、ここから出て行ってしまいました。それっきり帰って来ることはなく、すっかり団地も元気をなくしてしまった」
今や、団地の高齢化の波は、外国人にも押し寄せていた。そのことを裏付けるようなことがあった。団地内を歩いていると、70~80歳代とおぼしき4人の女性が、シルバーカーや杖を用いながら向こうから歩いてきた。てっきり日本人の高齢者だと思っていたが、その女性たちが話している言葉は中国語だった。
それでも、活気が全て失われたわけではない。団地近くには開店して20年になるベトナム料理屋がある。その日はベトナム人の親戚同士が昼から飲み会を開いて賑わっていたが、普段は日本人も多く来るそうだ。注文した牛肉のフォーは、甘めのスープに牛肉のうまみが溶け出し、病みつきになる味わい。絶品だった。