昭和の名残を歩く…「治安が悪い」「買い物難民」「高齢化の波」という現実
「治安が悪い」に翻弄される住民のホンネ
この団地はかつて殺人事件が発生し、それを境に「治安が悪い」というイメージが定着した。外国人の居住が進んだことでよりそのイメージが広まってしまったが、団地内で外国人向けの食品店を経営するベトナム人の男性店主はこう話す。
「確かに悪いことをする外国人もいます。しかし、私たちが見て見ぬふりをしているわけではありません。もし悪い外国人が多くなれば、それを嫌がって良い人がこの団地から出て行ってしまいます。その前に、私たちが彼らと話し合い、犯罪など悪いことをやめるように説得しています。治安が悪くなって困るのは私たちも同じです」
「治安が悪い」というウワサに翻弄されながらも、住民は日々それぞれの平穏な生活を営んでいる。
団地の敷地内には人が住んでいる気配がなく、住宅の軒先にゴミがあふれているエリアも。住民に話を聞くと、そこは老朽化が著しく建て替える予定で、住民が立ち退いた後なのだという。かつての住民が引っ越しの際に捨てていったとおぼしきゴミの山の中には、少年野球の帽子や日本人形など、当時の人々の生活を思わせるようなものもあった。
■2049年までに建て替え
建て替えは2049年までを目安に、団地全体で順次行われる。新たな建物にはエレベーターを設置するなど、バリアフリー化を進める。現在の建物には洗面所と脱衣所がないため、それらを取り入れ、現代の人々の価値観に合った間取りにするそうだ。
建て替えはあくまで現在の住民の住居を確保する目的だが、建て替え後に余裕があれば新規の入居希望者を受け入れるという。工事が完了する49年にはこの地域の様子もすっかり変化しているだろう。昭和、平成を経て、令和の団地はどのような姿になっているのだろうか。