ENEOS HD(下)高値で買収した再エネ会社が長崎県沖の決戦で敗北
ENEOSHDの斉藤猛社長は、セクハラで解任される半年前に「日経ビジネス」電子版(2023年6月16日付)でこう語っている。
〈40年度までの長期ビジョンの大きなテーマになるのがエネルギートランジション(移行)だ。地球温暖化の進行を抑えるため、グローバルで脱炭素化の波が押し寄せている。ENEOSの化石燃料事業は温暖化ガスの排出量が多く、トランジションを迫られている〉
〈手は打ってきた。石油精製は23年10月、和歌山製油所(和歌山県有田市)を停止。再生エネルギー開発のジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE、東京都港区)を買収した〉
22年1月、100%子会社のENEOSを通じて、再生可能エネルギー発電事業者のJREを買収した。買収額は2000億円。ゴールドマン・サックスが75%、シンガポール政府投資公社が25%出資する合同会社から全ての株式を取得した。
ENEOSによるJREの巨額買収は証券市場から「狂気の買収」(エネルギー担当のアナリスト)と酷評された。
JREは12年に創業した新興企業だ。20年12月期の連結売上高は224億円、最終損益は9億円の赤字。連結純資産は397億円で、買収額から純資産額を引いたのれん代は1603億円にのぼる。買収後、5%の株式を100億円で三井信託銀行に譲渡したが、のれん代が巨額なことに変わりはない。