伝説のサラリーマン投資家 日本株はバブルと呼ぶには程遠い「儲けるチャンスは大あり」
清原達郎(伝説の投資家)
2005年に発表された最後の長者番付(高額納税者名簿)で全国1位になったのはサラリーマンだった。肩書は「投資顧問会社運用部長」。ランキング上位には企業経営者がズラリと並んでいただけに異色のトップに世間の目は注がれた。それから約20年。伝説のサラリーマン投資家は再び大きな話題を集めている。著書「わが投資術 市場は誰に微笑むか」(講談社)で、これまでの投資ノウハウを余すことなく明かしたのだ。
伝説のサラリーマン投資家の個人資産は800億円超。23年に25年間にわたり運用したタワー投資顧問の「タワーK1ファンド」を終了した。この間のパフォーマンスは93倍に達するという。著書に“引退”の理由が書かれている。
<私は6年前、咽頭がんの手術で声を失いました。ステージ4だったので転移もしており、もう運用はできないと思いましたが2人の仲間に支えられてここまでやってきました。幸いなことに(亡くなられた方も多くとても不謹慎な言い方ですが)コロナ禍で相場が暴落。そこで大量の株式を購入するという賭けに出て成功しました。(中略)今となっては私が顧客のためにできることは「引退」しかありません>
株式市場は日米金利差やパレスチナ紛争などにより乱高下となっている。こんな時代の「投資の極意」を聞いた(文面によるインタビューを実施)。
──日経平均株価が一時4万円を超え、市場関係者からは来年か再来年にも5万円突破との声も聞かれます。現状の日経平均の水準をどう見ていますか。また年内、そしてそれ以降の見通しを教えてください。
日本の株式相場は急速に上昇してきたので、多少の揺り戻しがあっても全く不思議ではありません。また日本株の相場に大きな影響を与える米国株も「割安」とは言えず、しばらく不安定な状況が続くかもしれません。しかし日本株はバブルと呼ぶにはほど遠い状態で、今の金利を前提にすればまだ割安で儲けるチャンスは大ありです。
■シニア層にふさわしい投資術
──新NISA(少額投資非課税制度)がスタートし、これまで投資に無関心だったシニア層も関心を寄せています。60代、70代、80代にふさわしい投資術はありますか?
日本株は短期的に下がる可能性もあるので、TOPIX(東証株価指数)のようなインデックスに連動するETF(上場投資信託、例えばTOPIX連動型のETF)の積み立て投資から始めるのがいいでしょう。万が一、相場が下がっても安値でより多くの株式を自動的に購入する仕組みなので儲かりやすくなります。ただしこの積み立て投資が有効なのは比較的若く、これからも継続的に収入が入ってくる20代から40代の人です。今大きく投資するお金がなくても収入の一部を毎月積み立てられるからです。シニア層については話は変わってきます。まず趣味で銘柄を選んで株式投資をされる方は、死ぬ直前まで株式投資をしていればいいのでしょう。しかし一般論でいえば、75歳を過ぎればもう終活の時期でしょう。投資はあきらめ現金中心でいいと思います。60代の方でもう引退されている方が1000万円の銀行預金を持っているなら、200万円ぐらいは株を買ってもいいかもしれません。でも今後、定期的な収入がないのなら700万円の株式投資は多すぎると思います。500万円程度がマックスでしょう。200万円ぐらい株式投資をしておいて、万が一暴落した時に追加で200万円投資するぐらいがちょうどいいのでは。
──シニア層がやってはいけない投資術があればお願いします。
シニア層で一番大事なことは、これまで蓄積してきた資産を奪われないようにすることです。悲惨さの順番で言うとこうです。
(1)未公開株への投資。投資した金額はゼロになります。丸損です。いわゆる「儲け話」もこの類いで、返ってくるお金は一銭もないことを覚悟しとくべきです。
(2)金融機関が勧める「仕組み債」。これは儲けがわずかで損がどでかい商品です。大体目安として返ってくるお金は投資金額の半分程度だと覚悟しといてください。
(3)金融機関が勧める「手数料のバカ高い商品」。相場が良ければ損することは少ないでしょうが、相場次第で投資金額の半分を失うようなリスクはあります。それプラス、勝っても負けてもバカ高い手数料を取られます。典型的なぼったくり商品が「ファンドラップ」(ラップ口座)です。