著者のコラム一覧
春名幹男国際ジャーナリスト

1946年生まれ。元共同通信特別編集委員。元名大教授。ボーン・上田賞受賞。著書に「秘密のファイル CIAの対日工作」など。

米大統領選での民主党「ハリス擁立」はオバマ元大統領のシナリオなのか

公開日: 更新日:

(1)アメリカ大統領選

 米民主党内の「バイデン降ろし」は6月27日の第1回テレビ討論終了直後に始まった。

 誰が見ても、明らかにバイデン大統領(81)の負けだった。

 声がかすれ、質問されても回答に詰まった。直後の全米世論調査平均で、トランプ前大統領(78)との差は前日の1.5ポイントから3.3ポイントに開いた。

 民主党内から最初に声を上げたのは、2008年大統領選でオバマ元大統領の選対本部長だったデービッド・プルーフ氏だった。

 討論会当日の夜、MSNBCテレビに出演し、米国防総省の戦争準備態勢で言えば最も緊急度が高い「デフコン1だ」と言った。

 7月初めにかけて、デービッド・アクセルロッド元大統領上級顧問らオバマの元スタッフを中心に厳しい指摘が続き、ごく一部の下院議員らの間でバイデン降ろしの動きが始まった。

 7月13日、ペンシルベニア州バトラーでの屋外選挙集会でトランプが銃撃を受けて右耳上部貫通で血を流しながら民衆に「ファイト」と叫んで退場、15~18日の共和党大会も盛り上がり、「トランプ勝利」の予想さえ高まった。

 その間、ワシントンで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、バイデンはウクライナのゼレンスキー大統領とロシアのプーチン大統領の名前を取り違える失言をした。

■外堀を埋められたバイデン

 問題はその舞台裏で何があったかだ。米政治情報サイト「ポリティコ」によると、バイデンは「オバマは顔を見て、大統領選からの撤退を求めたわけではない」と不満を漏らしたという。

 結局7月21日にバイデンは撤退を発表すると、物事がトントン拍子に決まった。7月中に早くも、ハリス副大統領陣営の選対本部長にプルーフ氏を充てるなど、元オバマ選対の優秀なスタッフを集めることが決まっていた。バイデンは外堀を埋められ決断したようだ。バイデン陣営に優れた選挙コンサルタントを欠いていたことも問題だった。

 2008年大統領予備選で本命のヒラリー・クリントン候補を破ったオバマ元選対の貢献度は高い。

 米民主党大会が終わり、ハリスの演説のうまさとディベート力が改めて見直された。

 ラストベルトとサンベルトの激戦7州の中で、「ハリスが詰めたが、トランプがなお1~2ポイント差リード」が4州、「ハリスがリード」が2州、1州は互角という状況。この状況が続き、ハリスのリードが明確になると、トランプ陣営は違法な手段に出る可能性もある。

 8年前、あの故エフゲニー・プリゴジン氏のインターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)という組織が女性工作員を米国に派遣し、フェイスブックなどのSNSに米国人を装ったアカウントを大量に作ったことが知られている。厳重警戒が必要だろう。 (つづく)

【プレミアム会員限定】春名幹男オンライン講座 動画公開中
 https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4592

【連載】激動国際ニュース どう動く3つの戦い

最新の政治・社会記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  2. 2

    小泉進次郎氏「死ぬまで働け」戦慄の年金プラン “標準モデル”は萩本欽一…なんでそうなるの?

  3. 3

    阪神・近本の“球宴サイクル安打”に感じる恥ずかしさ

  4. 4

    W杯8強へ森保J「5人の重要人物」 頭痛の種は主将・遠藤航の後継者…所属先でベンチ外危機

  5. 5

    貴景勝に今場所終了直後の「引退説」…満身創痍で大関陥落も「株・部屋」には不安なし

  1. 6

    大谷が2026年WBCを辞退する可能性…二刀流継続へ「右肘3度目手術」は絶対避けたい深刻事情

  2. 7

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  3. 8

    巨人が決められないバント、出ない適時打の八方ふさがり

  4. 9

    「負けた」はずの琴桜が「勝った」ウラ事情…疑惑の軍配が大炎上《翔猿がかわいそう》

  5. 10

    U18高校日本代表の気になる進路は?ドラ1最大4人、大阪桐蔭勢は早大、法大進学か