防衛費増額の根拠「台湾有事」は雲散霧消している
防衛費増額は妥当なのだろうか。防衛省の概算要求は、ついに8兆5389億円に達した。第2次安倍政権以前と比べると2倍近くに膨らんだ形だ。
増額の理由は台湾有事である。中国による台湾の攻略は必至である。その際には日本の先島諸島も危険になる。だから、防衛費を増額して対応する。自衛隊を強化し、南西防衛を充実させ、敵国攻撃能力で中国を抑止する--という趣旨であった。
しかし、その台湾有事は雲散霧消している。現状は危機からは程遠い。
なによりも最大原因だった蔡英文総統は退陣してしまった。日本では好評価だが、実態は偏差値が高い安倍晋三である。その蔡が自らの政治利益のために強硬路線をとって発生したのが、海峡危機である。
新指導者の頼清徳には強硬路線を続ける力はない。当初は強気であったが、それで支持率が急落した。不人気の徴兵再開や所得格差の問題もある。その解決のためには中国との緊張は高められない。
台湾の議会も危機回避を優先する。第1党は野党の国民党である。中国との安定や「『一つの中国』の堅持」を最優先している。