原委員長の“ダメ出し”はザック監督にどこまで届いたのか?
原委員長の性格からして、高圧的に直言するタイプではない。全権は監督にあることを十分に理解し、あくまで個人的な見解にとどめたはずだ。
それでもパワープレーに言及せざるを得なかったところにザック・ジャパンのジレンマが見て取れる。ザッケローニ監督は、W杯メンバー23人の発表前の4月に代表候補合宿を行った際、ヘディングの強い豊田や川又を試したが、最終的にメンバーに加えなかった。
代わりに入ったのが大久保や斎藤らドリブラーだった。最終メンバーから、指揮官のメッセージが感じられた。あくまで“地上戦”で世界と戦う決意が感じられた。
ところが、2試合とも終盤にCB吉田にパワープレーを指示した。非常に違和感を覚えた。吉田というのは、たとえば同じCBでも闘莉王(名古屋CB)のように得点感覚のある選手ではない。あまりにも付け焼き刃的な起用だ。W杯のプレッシャーから「乱心した」としか思えない言動に、原委員長も不安を覚えたことだろう。
「4年間かけて築き上げてきたスタイルを貫くように」
「それで結果が出なかったら、それはそれでしょうがないでしょ」
原委員長は、ザッケローニ監督にこう伝えたことだろう。その光景が目に浮かんでならない。
文・六川亨(元週刊サッカーダイジェスト編集長)