世界体操初個人5連覇も…内村にはなぜ「ウチムラ」がない?
万能タイプの内村が新技をマスターするのは不可能ではないが、置かれている立場がそれを許さないという事情もある。
現在、日本の体操界が五輪や世界選手権で強く求めているのは、団体での金メダル。今回内村は、団体の平行棒は免除されて5種目に出場した。少しは負担が減ったとはいえ、床運動のスペシャリストである白井とは異なり、内村には全ての種目で安定した演技が求められるのだ。
体操は試合本番で技の確実性を重視するため、練習で完璧な状態に仕上げた技だけ実施するのが鉄則だ。練習で成功した大技でも、完璧にマスターしていなければ、実戦で行うことはない。
もうひとつは内村の美学だ。体操競技の採点は、技の難易度や組み合わせで上がる「Dスコア」と正確さを見る「Eスコア(10からの減点)」の合計である。「全種目のEスコアトップ」を目標に掲げた内村は、「世界で一番美しい体操」をアピールしたいのだ。この日の「跳馬」では、そのEスコアは圧巻の9.633。着地がピタリと決まると両手でガッツポーズを見せた。今の内村にとっては新技など、どうでもいいのだろう。
▼内村のコメント
「結果は金メダルで5連覇ですけど、平行棒と鉄棒で失速した。まだまだかなと思う。(5連覇できたのは)ミスをしないでやろうと、ずっと思ってやってきた。あとは着地ですね」