横浜高野球部を支える 渡辺監督「裏」の顔
ボール代だけでも1年で100万円ほどかかる。甲子園に出場すると、プロ野球選手になったOBが寄付をしてくれるため、「とにかくボールを頼む」と依頼した。グラウンドの芝生の維持にも100万円。年末になると私は部員と一緒にバックスクリーンなどのペンキ塗りをやった。もちろん経費削減のためだ。60万円では、普通にやっていたら大赤字になってしまう。
渡辺は長年、野球部を支えるために金策に奔走していた。夕方、私に「絶対に殴るなよ」と言い残して練習を早退すると、横浜の企業の社長などが集う「横浜友達会」の会合に頻繁に顔を出した。財界人との人脈を築き、金銭面から野球部を応援してもらうためだ。
長く援助してくれた横高野球部OBで1期生の高僧とも深く付き合った。有力OBで大先輩でもある。誘いには二つ返事で応じ、朝まで酌を交わすこともたびたびあったようだ。翌日は授業も練習もあるというのに、身を粉にして人と付き合った。
選手寮の食事を仕入れる横浜の市場も、渡辺との関係で通常より何万円も安くしてくれている。野球部後援会長との付き合いも深い。
酒席が苦手な私には絶対にできない。いつも頭が下がる思いで渡辺を見ていた。彼が人格者といわれるのは、こういう“裏の顔”にあると思う。