澤村も“逆球”でサヨナラ打浴び…制球自慢の投手なぜ減った
稲尾さんの話は誇張ではない。かつてはどの球団にも制球のいい投手はゴロゴロいた。
■電光掲示板に球速表示
プロの制球力に初めて度肝を抜かれたのは、私が高知商3年の時だ。授業を抜け出し阪神の高知キャンプを見に行くと、ブルペンには小山(正明)、村山(実)さんという球界を代表する投手が投げていた。この2人が投げている時は球威ばかりに目がいったが、そこには技巧派の渡辺(省三)さんもいた。運よく渡辺さんの「ラスト30球」を捕手の真後ろから見ることができた。球威では小山、村山にかなわないものの、30球の間、捕手のミットはほとんど動かない。間近で見ていたからわかったのだが、たまに動いてもミットの大きさ半分程度だった。
「このぐらいのコントロールがないとプロではやっていけないのか」と、強い衝撃を受けたことを今でも覚えている。
私が巨人で投手コーチをやっていた79年、「空白の1日」で世間を騒がせた怪物右腕の江川(卓)が入団してきた。江川もコントロールのいい投手だった。それでも外角低めに構えてミットが動かなかったのは3球まで。4球目は捕手のミットは大きくズレた。