石原と会沢が共存 広島が繰り出す常識外れの“正捕手2人”
「優勝チームに名捕手あり」とは、野村克也元ヤクルト監督の口癖だ。
現役時代の自身はもちろん、西武の伊東やヤクルトの古田、中日の谷繁に巨人の阿部がその代表格だろう。不動の正捕手がチームの安定をつかさどるとの説に異論はないが、昨年の優勝球団広島はこれに当てはまらなかった。
ベテラン捕手の石原慶幸(37)と中堅捕手の会沢翼(29)が共存。それぞれ83試合、50試合に先発出場し、リーグトップのチーム防御率を記録した。
「今季もここまで石原が12試合、会沢が11試合と先発マスクを分け合っている。リードに定評のある石原、打撃が持ち味の会沢。異なる武器を持つそんな2人を、先発投手との相性によってベンチが巧みに使い分けているのだが、最近はそれが揺らぎつつあった。なにしろ会沢の打撃が前日の試合まで打率.189とサッパリ。どうせ打てないなら、経験豊富でより投手からの信頼が厚い石原を使うべきではないか。そんな声が高まり始めていた」(広島OB)
その会沢が26日の巨人戦で決勝打。同点で迎えた六回1死満塁の好機に中前へ2点適時打をはじき返した。前打者の代打新井が四球で歩いた直後の打席。「自分だったら何から入るか考えた」と捕手の視点で狙い球を絞り、定石通りに初球を打った。守っても、今季初登板初先発で制球の定まらない福井を粘り強くリードし、「福井さんが我慢強く投げていた。何とか勝ちをつけてあげようと思って打席に入りました」とのお立ち台での言葉通り、白星をプレゼント。負ければ首位陥落という試合で攻守にわたる活躍が光った。
「プレーボールしたらスタメンもベンチも関係ない。選手が全員で戦う意識でスタンバイしてくれている」とは、試合後の緒方監督。「2人で正捕手」が今年も広島の武器になりそうである。