中国出身の父の夢「第2の故郷となった仙台を卓球王国に」
羽生結弦の復帰が取り沙汰されていた1月末、羽生の地元である宮城県仙台市は、もうひとつの驚きで沸き立った。仙台出身の張本智和が、全日本卓球選手権の男子シングルス決勝で水谷隼を破り、日本卓球界の頂点に立ったのだ。水谷がリオデジャネイロ五輪で日本に最初のメダルを持ち帰った快挙は、まだ記憶に新しい。全日本選手権で史上最多の9度の優勝を誇る押しも押されもしないエースを、14歳6カ月の中学2年生が退けたのだから、驚くのも無理はないだろう。
「今日の張本がいつも通りだとしたら、何回やっても勝てないと思う」
「張本が来る前に、たくさん優勝していてよかった」
張本は、世界の舞台で中国勢の攻撃をしのいできた水谷の鉄のディフェンスに立ち向かい、攻めまくった。超前陣の高い打球点から、フォア、バックと両ハンドを力強く振り、文字通りの高速卓球で押しまくった――水谷が潔く天才少年の実力を認めたのは、これが初めての番狂わせではなかったからだ。
昨年、ドイツのデュッセルドルフで開かれた世界卓球選手権2回戦でも、13歳で中学1年生の張本が水谷を4―1で下し、最終的に史上最年少でのベスト8入りを果たした。この時は、リオ凱旋後の過密日程なども考慮し、水谷に同情する声もあったのだが、今度ばかりは大舞台でのガチンコ勝負だ。「ここから自分の時代にしたい」という少年の言葉が、2020年の東京オリンピックへ向けた、新たな時代の到来を告げたと言っていいだろう。