悪いのはハリルだけか 監督解任劇の裏に潜む私怨と巨悪
「少なくとも原、霜田両氏には、日本代表が目指すべきサッカーは何か、W杯で結果を出すために何が必要か、彼らなりの確固たるビジョンがありました。両氏は欧州をはじめとした各国に独自の人脈を持ち、歴代監督としっかりコミュニケーションを取っていた。田嶋会長体制からはそのビジョンが感じられないし、外国人監督選びに対してパイプもあるとは思えません。協会に2人が残っていれば、ハリルホジッチ監督をうまく操縦できたはずだし、選手との関係もここまでひどいものにならなかったと思う。その意味でも田嶋会長の責任は大きいと思うのです」(前出の六川氏)
田嶋会長は、“政敵”になった原、霜田両氏を駆逐し、彼らが招聘したハリルホジッチ監督と当初から良好な関係を築こうとはしなかったともっぱらだった。
田嶋体制以前には、当時の川淵三郎会長が独断でジーコ、オシム両監督の招聘を決定。それはまさに鶴の一声という様相だった。06年ドイツW杯で1次リーグ敗退の惨敗を喫し、ジーコ日本に対する批判が噴出した直後に、川淵会長はドイツからの帰国会見の席で後任監督として交渉中だったオシムの名前を口にし、批判を瞬く間に新監督への期待に変えた。国民的関心事になった代表監督の人選は、時に政治的に利用され、時に権力者が力を誇示するための道具にされ、時に今回のように私怨に使われる。
ビジョンは二の次という根本的な問題が、日本代表とサッカー協会にはあった。それが今回、最悪の形で火を噴いたわけだが、実は西野技術委員長の監督就任を巡っても水面下ではドタバタが繰り広げられていた。
(つづく)