16連敗で脱出…ヤクルト21人が“地獄の21日間”を振り返る
■中村悠平は投手になった夢を
正捕手の中村悠平(28)は、5月30日の広島戦(神宮)で投手陣が13失点して14連敗を喫した夜、ベッドで野球の夢を見た。連敗中、初めてのことだったという。
「なぜか、僕が投手になって、(神宮の)マウンドでただひたすら投げているんです。抑えたかどうかまでは覚えてないんですけど……」
ヤクルトは連敗中、投手が崩れる試合が多かった。扇の要として、責任を強く感じていた。
「家にいても、外に出ても、気持ちがどんよりしますよね。連敗を止めよう、止めようと思いすぎてるのかな、って考えたり……。でも、僕らだけでなく、裏方さんたちの生活もかかっている。支えてくれる人たちのためにもやらなきゃって思っていました」
■トイレ掃除で「流れ」
今季39試合に出場する荒木貴裕(31)は試合がなかった27日、「『流れ』をよくするというので」と、トイレやお風呂などの水回りを掃除。ゲンを担いだ。
それでいうと、「普段から同じ種類のアンダーウエアしかはかないとか、気にしている方」と言う石井弘寿投手コーチ(41)も、「流れが良くなるように」と30日の朝に同じく水回りを自ら丹念に掃除した。宮出隆自打撃コーチ(41)は「あまりゲン担ぎはしないタイプですけど、休日に髪を切って気分転換しようと思った」と、頭をスッキリと刈り上げた。
衣笠剛球団社長兼オーナー代行(70)は「こういうときは身の回りをきれいに」と神宮クラブハウス内の植え込みに生えていた雑草を駆除。こまやかな気配りで現場をバックアップした。
裏方も思い思いにサポートに努めた。バレンティンを担当する久野通訳は、クラブハウスに東郷神社(東京・原宿)の「勝守」があるのを見つけ、「御利益があるかなと思いました」と、ベンチに持ちこんだ。お守りのひもの部分をガムテープで固定。テープの上にはマジックで「TODAY WIN!」と記した。
江村将也広報兼打撃投手は連敗中、こう言っていた。
「裏方はみんな、何とか勝ちたくてゲンを担いでいます。僕は28日に靴を替え、29日にはグラブを替えました。負けたら元に戻したり。球場へ行く途中に寄るコンビニも替え、買う物もコーヒーだと勝てなかったから、野菜ジュースにしたこともあります」
球団マスコットのつば九郎でさえ、スターバックスに寄ると勝率が良いと、ゲン担ぎしていたほどだ。
この21日間、それぞれがもがき苦しみ必死に前を向こうとしたわけだ。
青木は連敗を止めた日、「(勝利は)すごくうれしい。これだけの連敗は初めて。いい勉強、いい経験になった。でも1回でいいや」と冗談を交えながら噛みしめるように言った。ヤクルトは地獄の日々を糧に、再浮上できるか。