スタメン起用してくれない 西本幸雄監督に投じた不信任票
「代打でホームランを打つなど結果を残していたけど、当時の西本(幸雄)監督がわしをスタメン起用してくれない。だから、西本監督が選手相手に自分の信任投票をやったときも、わしは不信任のほうに入れたよ(笑い)。一軍で4打席立つのが目標やったし、最初から代打でいいと思っていたわけやない。とにかく、誰よりも遠くに飛ばすバッティングを見せつけたら、監督も納得して4打席立たせてくれるやろう、と」
■スペンサーのメモ
転機はシーズン3本の代打本塁打を記録した70年に訪れた。高井さんの「唯一」のポジションである一塁のレギュラーだったD・スペンサーが、何やらノートにメモをしているのを見かけた。通訳に聞いてみると、相手投手の癖を書き込んでいるという。
「なるほど」と、思った。
「やはり、人と違うことをやらんといかんということか。わしも徹底的に研究してやろう」
このときから高井さんは、スパイさながらの隠密行動をとるようになる。球場入りすると、すぐに風の向きを確認。試合前の打撃練習では風の向きに応じて、有利な方向へ飛ばすことだけに熱中した。試合中はブルペンにフラッと顔を出すと、ブルペンキャッチャーを務める。