東京五輪の負の遺産も未知のまま…札幌招致に突っ走る狂気
もう、いい加減にしたらどうか。
今年7月、いよいよ東京五輪が開幕する。昨秋、ドタバタ劇を繰り広げたマラソン、競歩の札幌移転問題は、マラソンコースについて組織委員会と世界陸連の意見がぶつかった。結局、大通公園を発着点とする変則3周コースで大筋決まった。
その舞台となる札幌は、2030年冬季五輪の招致を目指し、活動を開始している。秋元克広市長は11日、スイスのローザンヌのIOC(国際オリンピック委員会)本部でバッハ会長と会談し、1972年大会以来の開催意欲や能力をアピール。それを受けてバッハ会長は「運営の能力などに疑いはない。市長の説明に感銘を受けた」と評価した。
30年の五輪誘致に手を挙げているのは札幌の他に、ソルトレークシティー(米国)とバルセロナ(スペイン)だが、「札幌が絶対有利」という声が少なくない。
26年冬季五輪はイタリアのミラノとコルティナダンペッツォの分散開催が決まっており、4年後の大会も欧州で行うことは現実的ではない。米国も28年にロサンゼルスで夏季五輪がある。札幌は26年大会を目指していたが、18年9月に発生した胆振東部地震の被害が大きく、復興を最優先して断念した経緯がある。さらに東京五輪でのマラソンと競歩の会場移転を急きょ受け入れたこともIOCの好印象につながっているという。
近年はとくに、冬季五輪を誘致する都市(国)の数が激減(別表)している。
22年大会に立候補し、最終候補に残っていたオスロ(ノルウェー)は、巨額の開催費用を理由に断念した。過去の冬季五輪で368個(金132、銀125、銅111)のメダルを獲得しているスキー王国の、まさかの立候補取り下げに、IOCは大きなショックを受けていた。
14年12月のIOC総会で決めた「アジェンダ2020」で複数都市や国での分散開催を認めたのは、五輪開催を誘致する都市の減少を避けることが最大の目的だ。