中田翔「暴行事件」でクビ窮地…“拾う神”になれるのは日本ハム“新監督”稲葉篤紀氏ただ1人
「クビにしろ!」
ネット上では厳罰を望む声がやまない。
後輩選手への暴力行為により、11日に出場停止処分を受けた日本ハムの中田翔(32)のことだ。
中田は4日に函館で行われたエキシビションマッチの試合前、20代のA投手の顔面などを殴り、その衝撃で吹っ飛んだAは壁に腰を強打。予定されていたその日の登板を回避せざるを得なくなったという。
Aは中田の「子分的存在」で、コロナ禍以前は他の後輩選手を交えて飲食を共にする機会が多かったそうだが、「宴会」は時に朝方まで及ぶこともあったという。
「A投手は中田との飲み会で酒を大量に飲まされ、翌日の移動便に遅刻。首脳陣やスタッフから大目玉を食らったことがある。このままでは野球がおろそかになることを恐れ、中田から徐々に距離を置き始めたと聞いています」
とは、日本ハムOB。
「中田は二日酔いで球場入りすることは減っていたが、かつて中田と頻繁に飲んでいた選手は、『あの人は飲み方が汚い。後輩を潰すまで飲ませる。飲まないとブチ切れるので、仕方なく付き合っていた』と愚痴を漏らしていた。子分の選手のひとりは先輩選手から、『本当におまえのことを考えてくれているのなら、遅くまで連れ回すようなことはしない』と、中田との関係を断ち切るようアドバイスされたといいます」
そんな経緯もあって、暴力事件は起きた。フロントは内々で処分するのではなく、球団トップが記者会見を開いて“身内のケンカ”を公にし、厳罰を科した。中田は3年契約の最終年を迎えており、今季限りでクビもあるとの見方もある。
■手を焼いていた球団
球団の対応を見ても、中田に手を焼いていたことがよくわかる。素行問題に加え、今季は打率.193、4本塁打、13打点と成績もサッパリ。4月7日のソフトバンク戦では、三振直後にベンチ内でバットを破壊。ベンチ裏で転倒して右目に青あざをつくった。試合を途中交代した上に、翌日の試合も欠場。4番の体たらくに合わせるように、チームは最下位に低迷している。
「日本ハムは、3年総額10億円の高額年俸を払っているが、それに見合った働きはできていない。それでも23年から新球場へ移転するにあたり、数少ない全国区の選手である中田をチームの顔として位置付け、期待をかけてきた。暴行事件によって、期待を裏切られる形になった。まして今はコンプライアンスが重視される時代。かねて素行が問題視されていた上に、後輩をブン殴った中田を自由契約にしたとしても、引き取る球団が出てくるとも思えません。手術が必要といわれている腰痛も深刻だけに、32歳という若さで野球界を去らざるを得ないくらいの窮地に追い込まれていることは間違いありません」(前出のOB)
師弟関係が頼みの綱
そんな中、球団内外では、「中田を救う神がいるとしたらあの人しかいない」との声がある。
侍ジャパンを東京五輪金メダルに導き、日本ハムの次期監督候補に挙がる球団OBの稲葉篤紀氏(49)である。球界OBがこう言う。
「稲葉さんは現役時代から、17歳年下の中田をことさら可愛がっています。今も公私で結びつきが強い。今年、中田が二軍落ちを直訴し、札幌の室内練習場でひっそりと練習をしていた際には、稲葉さんが頻繁に助言や練習の手伝いをしています。今の日本ハムには中田以上に長打が期待できる選手がいないし、『ポスト中田』として期待されている高卒4年目の清宮も二軍で打率.194、12本塁打と伸び悩んでいる。来季の日本ハム監督就任が確実視されている稲葉さんにとっては、戦力的にも中田に残ってもらって復活してもらいたいところでしょう」
■稲葉氏の引退セレモニーでは2人とも目を真っ赤に
実際、中田の復活をアシストできるのは稲葉氏くらいかもしれない。
稲葉氏は現役時代、中田に対して厳しく接してきた。若かりし中田が定位置を掴んで間もない頃、試合で左翼フェンス直撃の大飛球を放った。中田は手ごたえ十分で本塁打になると思い、ベースランニングのスピードを緩めたことで二塁打になった。その回が終わり、ベンチに戻った中田に対して稲葉氏は、「全力でやれ! ヤル気がないなら今すぐ野球をやめろ!」と大目玉を食らわせたという。
2014年の稲葉氏の引退セレモニーでは、2人とも目を真っ赤に腫らしていた。稲葉氏は最後の挨拶で「中田翔のことをよろしくお願いします」とファンに頭を下げた。中田本人も、「怒られたことは数知れず。僕にとっては特別な存在」と感謝している。
日本ハムの編成はフロント主導だが、新監督の猛プッシュがあれば、残留の追い風になるかもしれない。中田の進退は公私に付き合いの深い“新監督”次第となりそうだ。