巨人に必ず起こる“劇薬”中田翔の副反応…加入に翻弄される次期監督、生え抜き2人の選手生命も左右
「一体どこが紳士の球団なのか」
巨人OBで元投手コーチの高橋善正氏(評論家)はこう憤慨する。
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中田翔(32)が日本ハム在籍時の今月4日に行われたDeNAとのエキシビションマッチの試合前にベンチ裏で同僚選手1人に暴行。11日に球団から一、二軍の全試合の出場停止処分を科されながら、20日に無償トレードで巨人に移籍したことに「OBとして恥ずかしい」というのである。
初スタメンとなった22日のDeNA戦では、「引き分けになったけど起死回生だった」と原監督が絶賛した追撃の2ランを放ち、3点ビハインドから引き分けに持ち込んだ。中田は「(今永の)球が鋭かったというか、想定していた以上の球を投げ込まれたので多少の焦りはあったけど、打てて良かった」と胸を張ったが、逆風は強い。
11日に「出場停止選手」として公示されたにもかかわらず、巨人にトレード移籍したことで20日に解除となり、さっそく試合に出場しているからだ。冒頭の高橋氏が言う。
「日本ハムの選手として謝罪することはなく、たった9日間の出場停止処分で解除。『巨人移籍が決まったから解除します』なんて、めちゃくちゃな話でファンの理解も得られないでしょう。何をやっても移籍すれば許されるのか、となってしまいます。日本ハムの栗山監督が親交のある原監督に泣きついたところから始まり、その原監督には球団内で全権がある。とはいえ、相談を受けた球団首脳が止めないのはおかしい。『紳士の球団』が聞いて呆れます。選手を含め、球団内に中田の加入を心底受け入れている関係者が何人いるか。甚だ疑問です」
巨人もそれが分かっている。だから、22日の試合前に長嶋茂雄終身名誉監督が激励したり、中田が「全国コロナ医療福祉支援基金」に300万円を寄付するなど、ダーティーなイメージ払拭に躍起になっているのだ。
■次期監督の阿部への重荷
中田は2007年の高校生ドラフト1巡目で日本ハムに入団。打点王3度、ベストナイン5度の実績があるが、日本ハムでは今季、打率.193、4本塁打、13打点と不振に陥っていた。暴行事件のみそぎが終わっていないとの指摘がある中、戦力になるかも未知数である。
中田の加入に翻弄されそうな関係者が球団内に何人かいる。例えば来年から一軍で指揮を執る可能性がある阿部慎之助二軍監督(42)だ。主将、4番、正捕手の3役を務めた13年のWBCを共に戦った間柄だが、現在は二軍で「育成」をしている立場である。
「慎之助が監督に就任したら中田の起用法に困るでしょうね。腰の状態が悪く、明らかに衰えが見えるのに、実績十分で年俸は高い(今季3億4000万円)。いるだけで若手のチャンスは減るわけだし、ダメな助っ人外国人選手のようにすぐに見限るわけにはいかない。中田の操縦、もしくは引導を渡すのが最初の仕事になるかもしれないなんて、新人監督には酷だし、重荷でしょう」(高橋氏)
生え抜き坂本、岡本への懸念
デメリットはまだある。主将の坂本勇人(32)、主砲の岡本和真(25)といった主力への影響も懸念される。
さるチーム関係者がこう言った。
「これは契約最終年の原監督が来季も指揮を執ることが前提になるが、足腰の故障が表面化してきた坂本を守備の負担が大きい遊撃から三塁へコンバートし、三塁の岡本を一塁へ回すという『原構想』が頓挫するかもしれない。中田が今後、数年間にわたり一塁に定着すれば、坂本が遊撃を守り続けることになり、選手寿命を縮める可能性が出てくる。もしくは坂本が三塁に転向し、岡本が外野に回ることになり、入団当初のようなたらい回し状態になるかもしれない。昨季、本塁打、打点の2冠となった岡本の打撃にも影響しかねない。“中田問題”は巨人を支える生え抜き2人の今後を左右しかねないのです」
巨人の大塚球団副代表は「原監督は(中田を)『一人のプレーヤーとしてこのまま殺しちゃダメだ。痛みを共有して、もう一度生かすんだ』と。リーグ3連覇もあるし、力になってくれるのかなという話はしていた」と説明したが、事態はそんなに単純ではない。「中田翔」を受け入れたことで、球団内には次々と“副反応”が出てくるかもしれないのだ。