プロ2年目で開幕投手に 仰木彬監督と権藤博投手コーチから告げられた言葉の重み
「今年の開幕はアンタに任せるから」
1988年、近鉄が最後まで西武と優勝を争った年の開幕前、あれはオープン戦の最中だったと思う。
藤井寺球場での練習終了後、ひと息入れようとベンチ裏の選手サロンに向かう途中で仰木彬監督に呼び止められ、こう告げられた。
前年に15勝12敗で新人王を獲得したものの、プロ入り2年目。開幕投手はチームの顔のような立場の選手が務めていただけに、それなりに重みがあった。改めて監督室に呼ばれて「任せる」と言われるならまだしも、すれ違いざまに告げられただけに、一瞬、何のことかとキョトンとしている感じ。「はい、わかりました」と答えたとはいえ、自分が行くんだ、2年目で開幕投手をやらせてもらえるんだと実感が湧いてきたのは時間が経ってからだった。
■「ムリをしてもらう」
やはり開幕前の練習の合間に、今度は投手コーチの権藤博さんに、
「100試合まではきっちりとローテーションを守る。けれども、100試合が過ぎた時点でチームにチャンスがあったときは、そのときはムリをしてもらうかもしれない」