打者の内角を厳しく攻める捕手の山下和彦さんが心配になった
捕手は内角球を要求する際、ミットだけ内角に寄せて構える人と、体も寄せる人と、極端に内側に寄って構える人と3通りくらいに分かれる。山下さんは3つ目のパターン。自分の体の半分が打者に隠れるくらい内側に寄って構えた。そこまで寄ってもらえると、内角に投げやすい。ミットだけ寄せられるより、体ごと内側に寄ってもらった方が目標にしやすいからだ。少なくとも自分はそうだった。中でもブーマーをはじめ、石嶺和彦さんや松永浩美さんら、一発で仕留める強打者の並ぶ阪急戦は極端に打者の内角に体を寄せて、厳しく内角を攻めた。
打者は後ろを振り向かない限り、捕手がどの位置に構えているか分からない。けれども、分かることがある。投手が牽制を入れたときだ。ずるい打者は投手が一塁に牽制した瞬間、チラッと後ろを見る。捕手が構えている場所をそれとなくのぞくことで、自分に対する攻め方が分かるからだ。
■いい加減にしろよ!
最近の牽制は捕手のサインがほとんど。捕手が自分でサインを出すのだから、のぞかれても構わないように構える位置をあらかじめ変えられるけど、当時は投手が自発的に牽制することが多かった。特に私は左腕で一塁への牽制には自信があったから、自分の判断で積極的にやった。