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Ricardo Setyonジャーナリスト

リカルド・セティオン 1963年生まれ。サンパウロ出身。中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材。スポーツジャーナリストに転身し、8カ国語を操りながらブラジルメディア以外にも英「ワールドサッカー」、伊「グエリン・スポルティーボ」など幅広く執筆。BBCのラジオ番組にも出演。98年、02年のW杯期間中にブラジル代表付き広報を務めた。現在もジーコ、ロナウド、ロナウジーニョ、カフー、ドゥンガら大物との親交も厚い。13年コンフェデレーションズカップではFIFA審判団の広報。国内では「ワールドサッカーダイジェスト」「スポルティーバ」などでコラムを執筆中。ブラジルのマッケンジー大、パナマのパナマ大、イスラエルのハイファ大などでスポーツマネージメントの講義を行う。自他ともに認める「サッカークレージー」。

W杯でサポーター寝泊まりファンビレッジの惨状…1泊200ドルの部屋は砂だらけ、汚水は逆流

公開日: 更新日:

チェックインに数時間並んで部屋に入ると別の人が…

「コンテナにクーラーはついているけど、それでも室内は27度。外はもっと暑いし、逃げ場がない。ノドがかわいて水を買おうにも、炎天下を歩かなくちゃいけないんだ」

 ちなみにビレッジ内で売っている食料品は、市内のスーパーの2倍近い値段だ。身長の高いイラン人男性は「ベッドが小さ過ぎて体がはみ出す」と呆れていた。部屋は砂だらけだし、洗面所では2日連続で汚水が逆流して部屋は水浸し。トイレの便器の中にネズミの死骸を見つけた人はこう言った。

「病気になるって思ったよ。1泊200ドル(約2万7000円)も払って病気になるなんてバカげている。すぐに出ていくことに決めたよ」

 衛生状態が悪い上に、建物のすぐ脇には建設用の重機が放置され、資材のゴミがうずたかく積まれている。実際、多くのサポーターが逃げ出したらしく、ビレッジは閑散としていた。

 対応のひどさに多くの嘆き節を聞いた。スタッフ不足からチェックインのためだけに何時間も並ばされた人もいた。ドイツから来たグループは「やっと入った部屋に別の人がいた」って言ってたな。並び直す気力も失せてしまい、その日は外で寝たそうだ。

「彼らは全く同じカギを持っていたんだ。それってありえるか?」

 突貫工事は間に合わず、オーバーブッキングも横行していたみたい。彼らは口々にこう言っていた。

「ファンビレッジの悪口なら、一晩中でも続けられる」

▽翻訳=利根川晶子(とねがわ・あきこ) 埼玉県出身。通訳・翻訳家。82年W杯を制したイタリア代表のMFタルデッリの雄叫びに魅せられ、89年からローマ在住。90年イタリアW杯を目の当たりにしながらセリアAに傾倒した。サッカー関連記事の取材・執筆、サッカー番組やイベントで翻訳・通訳を手がける。「カカから日本のサッカー少年へ73のメッセージ」「ゴールこそ、すべて スキラッチ自伝」「ザッケローニ 新たなる挑戦」など著書・訳書多数。

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