名コーチ中西太さんの指導の神髄 空振り三振した選手に「ええスイングや」と声かけた理由
今月11日に90歳で亡くなられた中西太さんとは、さまざまな思い出がある。
怪童と呼ばれた選手時代にも多くの実績を残されたが、印象深いのはやはり指導者としての中西さんだ。1988年から2年間、近鉄のコーチとして同じユニホームを着て、「プロの指導者とはかくあるべき」とその姿に教えられた。
卓越した技術論、とことんまで選手に付き合う情熱はもちろん、名コーチとして名を馳せた中西さんの指導の神髄は選手を決して否定しないことだった。
「そうや、それや!」「ええぞ、完璧や!」
ホメて、おだてて、その気にさせる。
当時の監督は、仰木彬さん。「マジック」の異名の通り、独特の感性でチームを引っ張る名将だったが、試合中はしばしば我を忘れてカッとなることがあった。
近鉄のチャンスの場面で打者が空振り三振。仰木監督が不満をあらわにするところで、決まって中西さんの大声がベンチに響く。
「ええスイングや! 三振なんて気にするな、次も思い切ってバットを振ってこい!」